実録 アニサキス症!−生魚に気をつけろ!



T. プロローグ

   皆さんは「アニサキス」君をご存知でしょうか?一般的にはあまり知られていないようですが、アニ君はお魚に寄生する寄生虫であり、誤ってこれが人間の体内に入ると、入られた人間はとても苦しい思いをすることになります。「とても」というと大したことがないように聞こえますが、人によっては、「激しい痛み」とか「のたうちまわる」とかいう表現もありますから、程度の差はあれ、ふつうの痛みでないことは想像がつきます。

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アニサキス君達−なりは小さくとも暴れん坊です(クリックで拡大)




U.実体験

   以下は、不幸にも(考えようによってはラッキーな)かごぐくたが経験したすべて実話です。

2009年1月23日(金)
12:30〜12:45
   会社の同僚と昼食を食べました。同僚は魚の唐揚げ定食、かごぐくたは漬け丼といって、刺身を酒、しょうゆ、みりん等で調合した漬け汁に漬けたものを丼にしたものを食べました。いつもと変わらず、美味しく頂きました。
13:30頃    なんとなく気持ちが悪くなり、トイレに行きます。唾液がたくさん出てきたので、これを吐いていると、さらに気持ちが悪くなり、昼に食べたものをすべて吐いてしまいました。ちょっとびっくりしましたが、これで気持ち悪さはなくなるだろうと、席に戻りました。確かに気持ち悪さはなくなりましたが、胃(みぞおち)の辺りに鈍痛があります。ただ、絶えられないほどではありません。
14:20〜15:20    なぜかインド人の相手をしなくてはならず、体長が悪い中、何とかお役目を果たします。このあたりは自己を犠牲にして会社に尽くす滅私奉公な日本のサラリーマンと言えるでしょう。不思議とこの間は痛みもそれほどではありませんでした。インドパワーでしょうか?
15:30    相変わらず鈍痛は続き、明らかに何かおかしいと思い始めます。実は半年ほど前に軽い胃潰瘍になっており、このときの痛みに通じるものがありましたので、ひょっとしたら胃炎とか胃潰瘍系かもしれないとも思いました。ただ、状況的にアニサキス君の疑いが強いなとも思いました。

   完全に余談ですが、別に身の回りでアニサキス君を体内に吸収した人を知っている訳でもないのに、なぜかかごぐくたはアニサキス君のことを知っていました。釣りをしてその結果としてお魚を料理することが多いので、興味があったのかもしれませんが、漫画か何かで読んだのかもしれません。従って、世間の人も普通に知っているのかと思っていましたが、そうでもないようです。まあ、これに限らず、こちらが超常識と思っていることも知らない人がいっぱいいるということを学習しています(ここらへんのお話は「常識問題−これぐらい知っててくれよ!(言葉編)」とか「常識問題−これぐらい知っててくれよ!(言葉編2)」をご参照ください。)ので、それほど驚きはしません。
16:00    途中退社し、お医者さんに向かいます。お医者さんは半年前の胃潰瘍のときにお世話になった近所の消化器系の専門医です。会社からは車で50分ほど掛かります。最初はどうってことなかったのですが、最後のほうは車の運転が辛くなるほど痛くなったりもしました。「なったりもしました」というのは今流行の曖昧な言い回しではなくて、ずーっと継続的にそうなのではなくて、痛みが軽くなったりひどくなったりすることがあるということです。
17:00    お医者さんに到着し、状況を説明。お医者さんの説明によると、1.胃炎・胃潰瘍系、2.アニサキス、3.心筋梗塞、の三つの可能性が考えられるとのこと。まず、3.の可能性を確かめるため、心電図をとりますが、異常なしで、3.の可能性は消えました。後は胃カメラを飲めばはっきりするのですが、まだ胃の中が空でないから、まだ胃カメラは無理とのこと。しかし、このお医者さんは明日、明後日はやっていません。とりあえず、痛み止めと胃酸を抑える薬と痛み止めが効かない場合用に坐薬を処方されて、月曜日になってもまだ痛いようならもう一度来なさいとのことでした。

   こう書くと、何かいかにも不親切そうな気がしますが、お医者さん的には間違った処置ではないと思います。というのも、仮に胃炎・胃潰瘍系ならば、痛みが治まればそれでいいでしょうし、アニサキス君ならば、数日のうちに死んでしまうからです。(痛みが我慢できればの話ですが。)
18:30    帰宅し、痛み止めと胃薬を飲む。痛みはかなり強くなっています。1時間ほどすると薬が効いたのか少し和らぎ、横になってテレビを見るぐらいの余裕はあります。ただ、何かを食べる気にはなれず、味噌汁とアイスクリームを食べたぐらいで、夕食は食べられませんでした。
23:00    徐々に薬が切れてきたのか、次第に痛みが増してきたので、もう一度痛み止めを飲んで寝ることにしました。無事寝られればいいのですが。
2009年1月24日(土)
0:30?
   痛み止めがあまり効かず、胸を強く押されるような激しい鈍痛が襲ってきます。寝られそうもないので、坐薬投入。坐薬は椎間板ヘルニアでずいぶん鍛えましたので、お手の物です。ピュッという感じで楽勝です。何事も経験が大事です。
7:00    坐薬が効き、予想外に普通に寝ることができました。(坐薬恐るべし!)症状はと言えば、痛いのは痛いのですが、これぐらいなら後2日ぐらい(アニ君がお亡くなりになるまで)は痛み止めだけで耐えられそうだなと思いました。ただ、原因をはっきりさせておきたいという思いがあり、タウンページを調べて土曜日も空いている消化器系の専門医を探し、行ってみることにしました。ちなみに、二食抜いている(問題の昼食はすべて吐いている)こともあり、食欲は普通にあり、というか、かなり空腹感はありました。しかし、胃カメラを飲むことを想定していたため、朝食は食べません。
10:00    お医者さんに到着。事情を説明すると、予想外に「アニサキスの可能性もありますね。」程度で、こちらはもう十中八九アニサキス君だと思っているので、ちょっと拍子抜けな感じです。さらに、時期的に感染症の恐れもあるとのこと。あまり痛がっていないのでそう思ったのでしょうか?でもとりあえず、12時まで待てば胃カメラ可能とのことなので、予約して、一旦帰宅することとしました。
12:00    胃カメラ(鼻から入れるタイプ)挿入のための麻酔開始。まず、鼻に数滴の麻酔。数分後、さらに別の麻酔(確かキシロカインとか言っていたような気がします。)を鼻に注入。さらに10分後?、同じ麻酔をもう一度注入。この頃になると喉というか鼻の奥というかが麻痺してきた感じがし、時折なされる看護師さんとの会話もし辛くなってきました。
12:30?    お医者さん登場。鼻から挿入するのは初めてなので、多少緊張します。ただ、鼻からの方が喉よりも随分楽だとのこと。本当にそうであることを祈ります。まず、最初に右の穴、次に左の穴を見て、大きい方の穴から挿入しますが、どちらもあまり大きくないらしく、何度かトライしますが、鼻の奥までカメラが行くと痛くて思わず頭を後ろに反らしてしまいます。ということで、お医者さんも鼻からの挿入をあきらめ、急遽喉からに変更です。従って、喉にもう一度麻酔をかけます。

   さて、喉に麻酔が効いたところで、いよいよ挿入開始です。喉の奥でカメラの先端をゴクッと飲み込むとカメラは食道を通り、胃の中に入っていきます。多少苦しいですが、何とか我慢できる範囲です。胃の中は我ながらきれいなピンク色です。ただ、後から聞くと、アニサキス君のためか、多少赤くなっていたとのことです。最初、数分間はあっちを見たりこっちを見たりと結構いろいろ探索しますが、アニ君はいません。「おかしい、アニ君ではないのかな?」と思います。それならそれでいいのですが、何かちょっと残念に思えるのはなぜでしょうか?

   そんなことを考えつつもさらに探索をしていくと、で、でました。胃壁にうずくまっているアニ君発見です。喉から胃カメラを入れているのでしゃべれないのですが、思わず「ウーッ」とも「オーッ」ともとれるようなうめき声を発します。というのも、アニ君がいたにも関わらず、お医者さんは何事もなかったのかのように、淡々と探索を続けており、ひょっとしたら気がついていないのではないかと思えたからです。お医者さんはアニ君を通り越して、他の部分を探索しているのです。しかし、そこはプロの余裕とでも言うのでしょうか、当たり前ですが、ちゃんと認識していたようです。看護師さんからは「しゃべらないでください。」としかられてしまいました。

   「もう探索はいいから、早く取ってくれよ。」と思っていると、なななんと、もう1匹アニ君がいるではないですか。これにはさすがにびっくりしました。しかし、またしても素通りで、他を探索し続けます。そして、しばらくして、おもむろに、「2匹いましたねー。」といい、ようやく駆除作業に取り掛かります。

   駆除作業は胃カメラの内部にあるストロー状の部分にマジックハンドのようなものを通し、器用にアニ1号をつまみ、体外に出します。聞いたところでは1度に1匹しか取れないため、複数匹いる場合は複数回胃カメラを飲まなければならないという話もありましたが、おそらく胃カメラのタイプが違うのでしょうが、マジックハンドのみを引き抜いてもう一度入れるだけですので、随分楽でした。医療機器の進歩に感謝です。アニ2号は胃壁に頭を突っ込んでおり、引っ張ってもなかなか抜けません。強引に引っ張るとちぎれてしまうのでしょう。慎重に何回か引っ張ると、観念したのか、抜けました。抜け後が出血していたのは印象的でした。最後に、胃の凹凸を見やすくする色素を入れて、終了です。これも、胃カメラのストロー状のところから薬品を流し込むだけです。


   さて、このようにして無事摘出手術は成功した訳ですが、その後で、写真を見ながら解説がありました。胃カメラはオリンパス製ですので、さすがに写真はきれいに撮れています。この先いつアニ君に出会うか分からないので、記念に写真のファイルをコピーしてくれと2度にわたって頼みましたが、2度にわたって断られてしまいました。自分の胃の写真なので、肖像権はあると思うのですが、だめでした。

   ちなみに、アニ君達は白いプラスチック容器に入れられて、検査に回されるということで、アニ君達自身の身元引き受けも断られてしましました。(別に、かわいいから飼育しようとかそういうことではなく、白い容器のままではなかなかいい写真が撮れないと思い、黒い紙の上に出して写真を撮りたいなと思ったに過ぎませんので、誤解なきよう。)しょうがないので、許される範囲内で何とか撮ったのが、掲載した写真です。体長は1cm〜1.5cm程度です。(アニ君であることを想定していたため、最初からデジカメを持参しました。「デジカメを用意してきた人は初めてです。」と言われましたが。)

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アニサキス君1号 アニサキス君2号

   どうですか?気持ち悪いですね。




V.後日談

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アニサキス君の検査報告書

   そう言えば、検査の結果を頂きました。特にコメントがある訳でもなく、単に、調べた結果、やっぱりアニサキス君でしたというだけの報告です。なんか、あまり意味のある報告とも思えませんが、とりあえず頂いたので、記念に掲載しておきます。

   ちなみに、胃カメラは保険適用で1万円強しました。あと数日で自然治癒したであろうことを考えると何もわざわざお金を払ってまで、アニ君を摘出する必要もないかもしれませんが、どうしてもはっきりさせておきたかったのです。今後いつチャンス?が廻ってくるか分かりませんからね。

   さて、人間誰しもこのような体験をするとそれがトラウマになり、なかなか生物を食べられなくなったりするのは理解できます。例えばこのサイトの方は改めてアニ君の可能性のあるものを口にするまで約1年半かかったそうです。かごぐくたも同様のことが懸念されましたが、元来、魚好きであり、長期にわたって生魚を口にできないのは我ながら不幸です。とは言うものの、やはりさすがに1週間は意識的に控えました。(余談ですが、アニ君を摘出した翌日に友人を家に招いて夕食をしました。成り行き上、鳥の水炊きとなりましたが、当の友人は「スーパーで見たら無性に食べたくなった。」とのことで、刺身の盛り合わせを買ってきました。もちろんアニ君事件は知っていたのですが・・・。さすがにちょっと、「やるなー。」と感心してしまいました。)

   話を元に戻しますが、いつお刺身類を解禁しようかなと思っていた矢先、何も知らない実家から、お刺身を含む大量の生魚が送られてきました。(さらに、翌日には嫁の実家からもこれまた大量のお魚が届きました。筍のように時期が重なるものでもなく、実家からも頻繁に何かが送られてくる訳でもないのに、絶妙のタイミングにちょっとびっくりしました。)正直言って、まだ少し早いなと思い躊躇しましたが、意を決して食べました。結果何事もなく、こと無きを得ました。確率的に言って、ここで再びアニ君に当たる程の強運(不運)の持ち主なら、とっくに宝くじぐらいには当たっているはず、というのは多少こじつけですが、まあ、物理的にアニ君には当たらないであろうことは分かっていました。心配したのは、食べた後に戻してしまうなど、精神的に受け付けなくなってしまうことでした。普段、「トイレでうんこしながらでもカレーを食える。」などと豪語していましたが、実際に食べた訳ではなかったので、どの程度精神的に図太いのか分かりませんでしたが、そこそこ図太いのであろうと想像されました。




W. 通知すべきか?

   さて、ここで一つ問題があります。それはアニ君の原因となった飲食店に通知すべきか、すべきでないかという問題です。アニ君は食中毒と違い、ある意味不可抗力と言えなくもないからです。ですから、通知すると言っても、治療費をよこせとかそういうことを言うのではなく、単に事実として通知するということです。それをどう受けるかはその店の判断です。店によっては不可抗力と言っても、今まで以上に注意するようにする(今までが注意してなかったと言っているのではありません。)かもしれませんし、単に気を悪くするだけかもしれません。

   難しい問題です。特に、ある程度親しければなおさら難しいと思います。かごぐくた的には「事実として教えてあげるべきかな。」と思いますが、どうするかは未定です。


   後日、事実のみを通知しました。一応、謝っていましたし、もともとこちらも問題にするつもりはないので、いいのですが、もう少しちゃんとした知識を持ってもらいたいなーと思いました。曰く、

「あれはなー、カツオにはおるんよー。」←だったら、もうちょっと注意してね。
「あれはなー、目で見えんやろ。見えんけん、しゃーないんよー。」←普通に見えますよ。
「あれはなー、あたる人はあたるんよー。」←そういんもんじゃないと思いますよ。

   これから判ることは、目で見えないと思っているから、目でよく見て注意はしていないだろうということです。ちゃんとした知識があって、十分な注意をしていて、その上でおこってしまったことならばしょうがないと思いますが、とてもそうは思えません。これ以降もこの店には行っていますが、煮魚、焼魚専門になってしまいました。




X.感想

   「山椒は小粒でぴりりと辛い」と言います。ちょっと違いますが、今回のことをまとめて言うならば、「アニ君は小さくとも暴れん坊」といった感じでしょうか。なかなかできない貴重な経験をしたということで、よしとしておきます。

   そう言えば、2008年の年末ジャンボ宝くじでは、6000円投資して、6600円帰ってきました。いつもは6000円投資して、600円の戻りですから、何やら当たり年の予兆はありました。しかし、こんな形で大当たりになるとは思いませんでした。おそらく確率的には相当のものがあるはずですから、どうせなら宝くじでもっと高額に当たるとかの方がよかったです。

   いやいや、まだ分かりませんね。今年は宝くじ買います。




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