ぼたん。ボタンではありません。いのししのことです。
ボタンはく製看板(クリックで拡大) |
2006年3月11日、生まれて初めてぼたん鍋を食しました。前々からいつも通る道沿いにあるいのししの半身をはく製にしたユニークな看板が気になっており、いつか行ってみたいと思っていました。右の看板は店の前のものですが、季節になると同じものが街道沿いに2つ設置してあります。正確に言うと同じものではなく、ちゃんと右向きと左向きになっており、おそらく存命中は同じものだったんだろうと思われます。
一応予約をした方がいいだろうと思い、予約の電話をしたときのこと、
おばちゃん「ボタン鍋4人前ですね。」なかなか手強いです。携帯電話の通話状態がよくないと言っていましたので、まあ、そのせいもあるのかなと自分を納得させます。しかし、後でその意味が判りました。
一頭丸々のはく製看板(クリックで拡大) |
そんなこんなで当日。店の前に車を停めると、早速おやじが出てきます。例の看板があったので、記念撮影をしようとすると、よくある光景とみえて、撮ってあげるから並んでとのこと。パシャ。「じゃあ次はあっちで。」というので、言われた方を見ると、何と今度は半身ではなく、一頭丸々のはく製が。なかなか迫力がありました。
そして、店に入ります。店内にはそこらじゅうに鳥、鹿などのはく製が。座敷を見るとそこには既に鍋の用意が。席について飲み物でも頼もうかと思っていると、いきなりおやじが大皿に盛られたいのしし肉を持ってきて、鍋に火をいれます。あれっ、いきなり?そしてすかさずおやじのいのしし鍋に関する説明が続きます。発言できません。少しの間隙を縫って、
かごぐくた「じゃあ、ビールお願いします。」このような「ビールなんか飲むんかこいつは」というようなやり取りを経てようやくビールにありつくことができました。このおやじ、なかなか濃いキャラで、一方的に話すタイプ。話そのものは結構面白いのですが、あまり会話が成立しません。聞くと自分自身が鉄砲撃ちで、とにかく自分のところの素材に関してはいのししに限らず、鴨や鮎にいたるまで絶対の自信を持っています。そういう風に言わせたようなところもあるのですが、
「あこは自分が鉄砲撃ちじゃないけん全然あかんよ。」とか、言いたい放題です。
さてさて、おやじの自慢とも誇りとも思われる説明を聞きながら、まずはすり鉢のゴマを各自する。正真正銘のゴマすりです。(あまり世渡りのうまくないかごぐくたはうまくないかもしれません。)そこに熱くなった「秘伝」のスープを入れて、まずはスープだけを楽しむとのこと。スープは味噌仕立て。うまいじゃん。これはお世辞でなく本当にいい味です。やるじゃん、おやじ。言うだけのことはあります。
次に大皿に盛られた肉を一気に全部鍋に投入。「おいおい、いくらなんでもそれはいただけないんじゃないの?硬くなるんじゃないの?」と思いますが、お肉は既に全部鍋の中。こういうもんなんだなということで煮えたところで食べてみます。これまたうまいじゃん。はっきり言ってそんなに期待はしていませんでしたし、前にぼたん鍋を食べたことがある人から、臭いとか硬いとか聞いていただけに、正直びっくりしました。肉は一切臭みがなく、硬さも硬いと感じることはありません。もちろんとろけるというようなということはありませんが、これがとろけるような感じだと逆に合わないかもしれないなとさえ感じられるぐらいです。しかも、最初に一斉投入された肉は最後になっても最初と同じように美味しく味わえます。やるじゃん、おやじ。これなら人にも勧められるし、また行こうという気になります。(おやじは濃いですが。)おいしゅうございました。次は鴨でも食べに来ようかな。
おっとっとっ、忘れるところでしたが、重要なことを一つ。鍋が終わった後は特に追加で注文するような感じでもなく、おやじも何かを勧める訳でもなく、本当に鍋だけ食べてとっとと帰る感じでした。晩飯というより、昼飯な感じです。お酒を飲まない人はそれでもいいでしょうが、お酒飲みにはちょっと寂しいかもしれません。
ちなみにおやじ曰く、いのしし肉が臭いというのは弾が腹に当たったりして、即死ではなく、暴れてから死ぬような場合。暴れることによって、全身に血が回るからだといいます。魚と同じですね。いのししも生け締めが必要ってことですね。
さて、これを書きながら思ったのですが、いのししのことを牡丹というのはなんとなく理解ができます。皿に盛られた肉が牡丹の花に見えないこともないからです。もちろんそういう風に盛っているからでしょうが。(おやじに写真を撮れと言われましたが、そのときは別に単なる肉にしか見えなかったので、撮りませんでしたけど、今思えば撮っておけばよかったです。)これについて少し調べてみると、大体次の2つの説があるようです。
まあ、両方なんでしょうね。ちなみに馬はさくら、鹿はもみじ(これは知りませんでした)と言いますが、それについてはこういうことらしいです。
(さくら)なかなか風流ですね。