ひじき

   2006年4月29日。前々から気になっていたひじきを突き止めることができました。

   場所は徳島M。漁港のあちこちで火が焚かれ煙が上がっています。最初は単なる焚き火かと思いましたが、そうではありませんでした。干潮の頃合いに、タイドプールで何やらとっているばーさんがいましたので、何をしているのかを聞いてみると、ひじきをとっているとのことです。これは聞き捨てなりません。どれがひじきかを見極める必要があります。聞いてみると何のことはない、辺り一面ひじきだらけです。

採った状態のひじきの写真
採った状態のひじき(クリックで拡大)

   前々からこれかなーと思っていたやつがそうでした。ここでちょっと言い訳ですが、判らなかったのも無理はなかろうという感じです。通常われわれが目にするのは乾燥ひじきです。乾燥してないやつでも、色は真っ黒です。しかし、生えているひじきは黒くありません。写真を見ると解る通り、くすんだ黄色というか、くすんだ抹茶色というか、何かそんな色です。さらに、形もなんとなく違います。これは生ひじきとして売っている物も実は全くの生ではなく、乾燥してないという意味であり、茹でられているためです。そうです、ひじきは茹でなければならないのです。そこら辺のところをばーさんに聞いてみました。

私「これどうやって食べるん?」
ば「鍋で3時間煮てな、その後6時間ぐらい蓋したままで蒸らすんよ。」
私「ふーん。」
ば「ほんでもな、鉄鍋やないと黒うならんけん。鉄やないとあかんよ。」
私「これとかここら辺にあんの全部ひじきだよね。」
ば「ほうじゃ。」
私「なんか、いいのとか悪いのか、硬いの柔らかいのとか見分け方とかあんの?」
ば「ほれは煮る時間やけん、関係ない。」

   見ると20mぐらい離れたところに巨大な釜があり、その前には網に詰められたひじきがうず高く詰まれており、今か今かと釜茹での順番を待っています。

   話を聞く限り、以外に簡単そうです。幸いうちにはズームイン朝のこだわりの逸品で買った南部鉄鍋があります。試しに釣り用の携帯バケツに一杯だけとって行くことにしました。

   さて、車を停めてあった漁港に戻ると、やはりひじきが詰まれており、釜茹での順番を待っています。よく見ると、巨大釜が横一列に並んでおり、そのうちの一つでは茹で上がったひじきを取り出しています。釜の中がどうなっているのか興味があったので、おばちゃんに見てもいいかと聞くと、快諾。中には怒涛のようにひじきが入っています。茹で上がったばかりのひじきの香りというか匂いが辺り一面に漂います。

   ここでも確認の意味を込めて話を聞くと、茹で時間は4〜5時間という点こそばーさんと違っていますが、そのほかは同じです。やはり鉄でないと黒くならないからだめだといいます。味が同じなら別に黒くなくてもいいんじゃないかなと思いつつも、きっと長い時間をかけて発達してきた処理法なんでしょうから、色以外にも何か意味があるのかもしれません。

   さて、ここで、バケツに摘まれたひじきに目が行ったのか、よほど物欲しげな顔をしていたのか、家で煮るのは大変だから欲しかったら少しあげるよと言われ、一般家庭からすると決して少しとは思えない、スーパーの袋にいっぱいの茹でたてひじきをもらいました。食べ切れなければ干せばいいと教えてくれました。おばちゃんは乾燥して、貝などのごみを丁寧に取って150g一袋にして漁協に出荷するとのこと。スーパーでの一般小売価格を見るとびっくりするそうです。

   さっきのばーさんもこのおばちゃんもみな親切です。一次産業従事者特有なんでしょうか?丁重にお礼を言って帰りました。

   家に帰って、もらってきた茹で済みひじきを調理してみました。少し柔らかい感じがしたので、試しにとってきたやつは茹で時間3時間とし、教えられた通りにやってみました。

茹ではじめの写真
茹ではじめの状態(クリックで拡大)

   ひじきもワカメほどは鮮やかではありませんが、茹で始めは同じように緑になります。その後徐々に黒くなっていきます。

黒くなったひじきの写真
黒くなったひじき(クリックで拡大)

   鉄鍋効果で、出来上がりは真っ黒です。調理して食してみると、当たり前ですが、ひじきです。

   残ったものを乾燥してみました。乾燥したものは見慣れた乾燥ひじきです。しかし、この縮みようは何でしょうか。乾燥前の状態では結構あるように思えますが、乾燥してみるほんのわずかです。自分でやってみると解りますが、(乾燥)ひじきはもう少し高くてもいいんではないでしょうか。

   ちなみに味をしめて、後日またとってきて、鍋が足りなかったので、鉄でない鍋に釘を入れて茹でてみましたが、やはり、黒くならず、昆布みたいな濃い褐色にしかなりませんでした。(※)味は変わらないように思えましたが、人間の先入観というか慣れというものは怖いもので、茶色いひじきには違和感を覚えます。でも何でひじきはわざわざ鉄鍋で煮て黒にするんでしょうか?誰か知ってたら教えてください。

   後日テレビを見ているとたまたま紀州でのひじきの加工方法をやっていました。それによると、徳島のやり方とは多少違います。紀州流ではまず、乾燥します。この乾燥の段階で黒くなるとのことです。次にそれを釜で蒸し、さらにそれを乾燥させるというな感じだったと思います。

   ところ変われば品変わるですね。でもどっちにしても手間が掛かるのは事実のようです。ひじきは味わって食べましょう。

   (※)スチールウールをちぎったものを入れて茹でたところ、黒さがアップしました。もっとたくさん入れれば鉄鍋で茹でたのと同じになるはずです。


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