自分に甘い半端な改革−政治資金規正法改正案成立−2007年7月6日

   2007年6月29日、政治資金規正法改正案が参議院をで可決され成立しました。以下は「YOMIURI ONLINE」からの抜粋です。


改正政治資金規正法が成立、5万以上の支出に領収書義務化

   閣僚らの不透明な事務所費問題を契機に与党が提出した改正政治資金規正法が29日午後、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

   改正法は、政治家の資金管理団体の光熱水費、事務所費などからなる経常経費のうち、1件5万円以上の支出(人件費を除く)について、収支報告の際、領収書添付を義務づけた。また、資金管理団体による不動産の所有を禁止し、法改正以前に取得した不動産は、資金管理団体の事務所として使用していない場合について、用途や使用面積、貸借料などを政治資金収支報告書に記載するとした。施行は2008年1月1日。

   民主党は1万円超の支出について、すべての政治団体を対象に領収書を義務づける対案を提出したが、与党は「事務作業が膨大になる」と反対した。

(2007年6月29日22時19分 読売新聞)


   もともとこの改正は、松岡元農水省の名言「何とか還元水」に象徴されるように、領収書の要らないものがあるのを利用して不正に政治資金を請求しているのではないかという疑惑に端を発していたと思います。改正内容を見てすぐに「おや?」と思うのはなぜ5万円なのかという点です。他にも不動産の所有を資金管理団体だけに限定したのではいくらでも抜け道があるとかいろいろ批判されていますが、個人的にはそんなに気になりません。さらにぶっちゃっけて言えば、別に政治資金の使い道をすべて明らかにする必要もないような気がします。実際問題として、中には相手先を明らかにできないような支出もあるだろうと思うからです。そういう意味では、一歩前進の改革であるといえます。

   しかし、5万円で区切ったその理由が許せないのです。その論拠とは「事務作業が膨大になる」というものです。そりゃあ、今までに比べると事務作業は増えるでしょうが、膨大になるとは思えません。いや、仮に膨大になるにしてもそれを理由とするのはおかしいと思う訳です。理由は単純明快です。企業においては1円の支出たりとも原則としてすべて領収書等の支出したことを証明する証拠を保存しておかなければならないからです。企業といっても一部上場の大企業だけでなく町の魚屋や八百屋にいたるまですべてです。しかも政治団体と違って、企業は商売を行うための組織ですから、取引数は政治団体の比ではありません。それこそ事務作業は膨大です。だからといって、5万円未満については領収書は要りませんということにはなりません。

   一般の国民には「膨大な作業」を強制しておきながら、自分達はそれを理由に都合のいい制度を作る。これでは国民は納得しないし、何より、国民を馬鹿にしている気がしてなりません。私なら以下のいずれかの措置を講じます。

  1. 政治資金のすべての支出に関して、領収書の添付を必要とする
  2. 一般国民や企業についても、5万円未満の支出について、領収書の保存を不要とする
  3. 5万円以上とする理由を「事務作業の膨大さ」とするのではなく、正直に「中には明らかにできない支出もある」とする

   まあ、現実性を考えると、2.はまず無理でしょうが、1.は事務作業が増えるにしても、可能なはずですし、本来こうあるべきだろうと思います。それもできないと言うのであれば、3.で、結論的にはなんら変わりませんが、審議内容が相当変わってくるはずです。(例えば、明らかにできない支出とは何で、なぜ必要なのかとかいうふうに。ただこれはつつかれたくないんでしょうね。)

   いずれにしても、それだけでは不十分で、本気で政治資金の透明性を考えるのならば、政治資金も税務調査の対象とすべきです。(もちろん例外はありますが、)一般企業が緊張感を持ってそれなりに帳簿をつけて中身を明らかにするのは税務調査があるからです。ここまでやれば本気なんだなということが判りますが、野党も含めてそういった意見は出てきません。なんとなく対決ムードを演出しているだけで、あまり本気で改革しようとしているように感じられないのは私だけでしょうか。


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