海水魚を飼い始めてまずほとんどの人は白点病を経験するはずです。一度も経験したことがなく長期飼育ができている人なんていません。断言します。言い換えれば、白点病を克服できなければ、海水魚の飼育はまず無理といえるでしょう。ネットで検索するといろいろな治療法が出てきますが、最終的にやっぱり決め手となるのは硫酸銅でしょう。もちろん賛否両論ありますが、自分自身いろいろやってみた結果そのように感じるしだいです。
白点病なオニハタタテダイ(クリックで拡大) | 白点病なハタタテダイ(クリックで拡大) |
こんなところでしょうか。
1、2については、とにかくその通りで、効き目は保証つきです。逆にそうでなければ、使う意味もありません。
3については、薬局で硫酸銅を買った場合で、ショップで銅イオン治療薬を買う場合はかなり高くなるでしょう。(これに限らず、普通にスーパーで売っているものでも、ひとたび水槽用としてショップに並ぶと値段は法外に高くなるのは何でですかね。私はそういう理不尽な価格差は極端に嫌いなので、薬局で硫酸銅を買います。一度買えばおそらく一生使っても使い切れないぐらいの分量があります。)
4、5については、その通り。
6については、実際に一番最初に無茶な投与の仕方をしてハタタテダイを死なせてしまいましたし、一度治療に成功して要領を得た後の二回目の治療時にもかかわらず、セグロチョウ2匹を死なせてしまいました。魚種によっても強い弱いがあるようです。
メリット、デメリットを十分に理解して、正しく投与すれば、効果は絶大です。
硫酸銅(クリックで拡大) |
それでは具体的な治療方法です。
まず、薬局で硫酸銅を買います。ぱっと行ってぱっと買えるもんでもないようですから、まず職業別電話帳で薬屋さんを調べて硫酸銅を売っているかどうかを聞きます。大概は取り寄せになるので、予約します。引取りの際に三文判が必要だったと思います。なお、硫酸銅は人間にとっても毒なので、取り扱いは慎重にします。特に子供のいる家では子供の手の届かないところに保管する必要があります。
次に、1g単位で計れる計りを用意します。できれば昔学校にあったような上皿天秤があればいいんでしょうが、そんなものはなかなか売ってませんし、あっても高いです。電子計りも1g単位で計れますが、その際は精度/誤差に要注意です。例えば、1.4gを1gと表示するようでは困ります。自己の責任において、納得できるものを用意しましょう。竹ひごで以下のような簡易天秤を作ってもOKです。(実際に私はこれでやっています。)1円玉1つで1gです。
次に、精製水を用意します。ドラッグストアで、コンタクトレンズ用の精製水を買います。精製水でないと、時間と共に銅イオンが他の成分と反応して計算どおりの濃度でなくなるようです。逆に精製水だと一度作った水溶液はなくなるまで使えます。
そして、0.1%の硫酸銅水溶液を作る訳ですが、500ccの精製水に2gの硫酸銅を溶かせば、約0.1%となります。普通に小学校でやったように計算すると0.4%のはずですが、通常入手する硫酸銅はCuSO4-5H2Oという風に水の分子がくっついているみたいで、これで0.1%になるらしいです。詳しいことが知りたい人は化学が得意な人に聞きましょう。
点滴器(クリックで拡大) |
次に、点滴器を用意します。サンゴ水槽に微量元素を添加するのに専用の点滴器がありますが、水槽用具の常として、単なる点滴器が2千円とか3千円もします。納得できる方はそれでいいんですが、私は納得できないので、以下のような点滴器を作りました。はっきり言ってこれで十分ですが、医療関係の友人がいれば、使用済みの点滴器をもらうのがいいでしょう。私も現在探していますが、なかなか医療関係の友人がおりません。今度自分に点滴を打つ機会があればもらってこようと思っていますが、なかなかそのような機会に恵まれません。丈夫なのも考えもんです。
最後に銅テスター(銅濃度測定キット)を用意します。こればかりは水槽用品を買うしかありません。RedseaとSeachemのテスターがメジャーかと思います。Seachemの方が高機能ですが、高くて面倒くさいです。しかも、これはよくわからないんですが、なぜかSeachemの方では何回やっても測定できませんでした。おそらくやり方がまずいんだろうと思いますが、とにかくダメでした。ということで、Redseaの方で測定しています。
さて、これで準備完了です。では水槽の水量を計算します。それに基づいて1回に投与する硫酸銅水溶液の量を計算します。添付のEXCELファイルで簡単に計算できますので、参考にしてください。例えば、総水量が180Lで0.3ppm(ppmは百万分の一)の濃度にするためには0.1%の硫酸銅水溶液が54cc必要になります。
この濃度も諸説ありますが、大体0.3ppm〜0.5ppm程度を維持するとする説が多いようですが、個人的には0.5ppmでは魚種によって濃すぎるような気がしますし、0.3ppmで十分に治療できます。
必要な硫酸銅水溶液の量が計算できたら、これを実際に投与していく訳ですが、ここで点滴器が登場します。間違っても一気にドバッなどと投与してはいけません。点滴器に水槽の水を1L程度入れ、そこに計った硫酸銅水溶液を入れ、よく混ぜます。これをポタリ、ポタリと一時間ぐらいかけて投与していきます。その際に投下した硫酸銅水溶液が一ヵ所に滞ることがないよう、水流のある場所に投与します。ここまで気を使う必要もないかもしれませんが、用心にこしたことはないようです。
投与が終わったら、銅テスターで濃度を測定します。この銅テスターがなかなかの曲者で、濃度判定は非常に微妙です。実際にやってみるとわかりますが、見ようによっては0.2ppmにも見えるし、0.4ppmにも見えるといった具合です。ですから、前後の投与状況を頭に入れて、追加投与の有無を判断し、0.3ppmを維持するように努めます。このような投与を12時間毎に行う訳ですが、12時間経ったから必ず投与するということではなくて、投与前にも濃度を測定して、投与量を判断します。(例えば、投与前に0.2ppmならば、0.1ppm相当を投与するといったように。)ここら辺は後述の私の実際の投与記録が参考になるかもしれません。(傾向として最初は水槽内の各物質と銅イオンが反応するため計算通りに濃度が上がりません。)
だいたい3日目ぐらいから目に見えて効果が現れ、1週間ぐらいで完全に白点が消えるはずです。完全に白点が消えてからもダメ押しの意味で、さらに2〜3日投与します。ただし、これが原因かどうかはわかりませんが、ダメ押し投与中に朝まではピンピンしていたセグロチョウ2匹が死んだことがありました。ここらへんの判断は難しいところですね。
以上で治療は終わりです。やってみるとわかりますが、治療中も魚たちは驚くほど普段と変わらず元気ですし、餌もバリバリ食べます。魚だけの水槽であれば、それほど硫酸銅を敬遠する必要はないなというのが実感です。とは言っても硫酸銅をもろ手を挙げて推奨している訳ではありませんし、使わないですむに越したことはありません。
以下は実際に行った治療記録です。
年月日 | 投与前 | 投与量(cc) | 投与後 | コメント | ||
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時間 | 濃度(ppm) | 時間 | 濃度(ppm) | |||
05年10月18日 | 19:00 | 55 | 21:30 | 0.2 | 試薬の判定はなかなか難しい。 | |
05年10月18日 | 21:45 | 20 | 22:30 | 0.2 | 濃度が足りないので、追加で0.1ppm相当の20ccを追加。 再度濃度測定するもほとんど変わらず。今日のところはこのままとする。 | |
05年10月19日 | 07:00 | 0.1? | 60 | 08:40 | 0.3 | 0と0.1の間にも見えるし、0.1と0.2の間にも見える。とりあえず、0.1ということにしておく。魚の様子はあまり変わらず どうも計算値よりも濃度が低めに出るようだ。0.2相当の55ccといいたいところだが、多少多めに60ccを添加する。その結果、ほぼ0.3ppmに達したと思われる。 |
05年10月19日 | 19:30 | 0.15〜0.2 | 30 | 21:00 | 0.3? | 気のせいか少し病状が改善したような気がする。 やはり判定は難しい |
05年10月20日 | 09:00 | 0? 0.2? | 60 | 10:00 | 0.35 | 0と0.2の判断がつきづらい。 でも時間的に2ってことはないだろうから、ほぼ0と判断して、60ccを添加することにする。 |
05年10月20日 | 20:20 | 0.15〜0.2 | 30 | 21:15 | 0.2〜0.3 | 濃度判定が微妙なので、後0.1ppm分の20ccと追加 |
05年10月21日 | 08:30 | 0.15? | 60 | 09:45 | 0.3 | |
05年10月22日 | 07:45 | 0.2 | 40 | そんなに残ってんのかな?でも今までの経験から、濃い目に0.2ppm分の36→40ppmとする。 気がつくと白点はほとんど消えている。わずかにハタタテの胸鰭、背鰭に少しにごりが残っている。" |
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05年10月22日 | 20:00 | 0.2 | 40 | |||
05年10月23日 | 09:30 | 0.2 | 40 | 11:15 | 0.3 | 白点はほとんど消えている。ハタタテsの背鰭にほんの少しの薄い濁りがあるのみ。 |
05年10月23日 | 21:30 | 0.15? | 40 | 22:25 | 0.3 | 新しい水溶液を作る。 |
05年10月24日 | 40 | 07:00 | 0.35 | 投与前の濃度測定は省略。 | ||
05年10月25日 | 06:30 | 0.2 | 40 | 昨日の夜は投与してないので、本当に0.2ppmも残っているのか?もうほとんど治っているが、本当にごくわずかだけハタタテSの背鰭に濁りがある。40ccを投与することにした。 | ||
05年10月25日 | 19:40 | 40 | ダメ押し。 | |||
05年10月26日 | 07:00 | 40 | ダメ押し。 | |||
05年10月27日 | 07:00 | 40 | ダメ押し。 |
年月日 | 投与前 | 投与量(cc) | 投与後 | コメント | ||
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時間 | 濃度(ppm) | 時間 | 濃度(ppm) | |||
06年02月02日 | 21:25 | 70 | 貝をイソギンのバケツに移し、投与開始。 | |||
06年02月03日 | 07:00 | 70 | 22:30 | 0.2 | 面倒くさいので、濃度測定はパス。 | |
06年02月03日 | 20:30 | 70 | 21:30 | 0.3 | ||
06年02月04日 | 08:30 | 80 | ||||
06年02月04日 | 20:45 | 80 | ||||
06年02月05日 | 08:45 | 80 | 0.3 | 午後になりかなり白点減少 | ||
06年02月05日 | 22:30 | 60 | 最初に作った500ccがなくなったので、足りないけど60cc | |||
06年02月06日 | 07:30 | 80 | ||||
06年02月06日 | 20:00 | 80 | 白点はほとんど消える。まだ少しひれに濁りがある程度まで回復。恐るべし硫酸銅。 | |||
06年02月07日 | 07:30 | 80 | ||||
06年02月07日 | 21:15 | 70 | 22:30 | 0.3 | 濃度を測らずにいたせいか、帰宅してみるとセグロ2匹が死んでいた。今朝までピンピンしていたのに。2匹同時に死ぬということはやはり原因は硫酸銅か。そういえば前回の治療時にはまだ2匹ともいなかったかもしれない。セグロは硫酸銅に弱いのか。ショックである。 | |
06年02月08日 | 07:30 | 0.3 | セグロが死んだこともあって、一応投与前に濃度を測ることに。するとなんと0.3ppm。やはり死因は硫酸銅か。ということで、今朝は投与なし。ちなみに症状はほとんど完治。わずかにひれに少し残るのみ。 | |||
06年02月08日 | 19:20 | 0.3- | まだこんなに残っているとは驚き。今日は投与取りやめ。魚たちはほぼ完治。 | |||
06年02月09日 | 07:00 | 0.2〜0.3 | 25 | ダメ押し |
年月日 | 投与前 | 投与量(cc) | 投与後 | コメント | ||
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時間 | 濃度(ppm) | 時間 | 濃度(ppm) | |||
06年05月17日 | 08:50 | 54 | 白点病かウーデニウムかよくわからんが、ハタタテを中心に(特にオニがひどい)とにかく細かい白い点がついている。ここ2週間あまり様子を見てきたが、一進一退ながらもどうも悪化しているようなので、硫酸銅投与に踏み切る。せっかく毎週のように100Lの水替えをし、銅の吸着剤も入れて、イソギンを本水槽に移すべく前回治療の銅の影響をなくしてきて、最近ようやく貝も元気に動き回ってきて、いい感じになっていただけに、銅の投与は躊躇されたが、お魚さんたちの命には代えられない。エビ、貝、ヤドカリを隔離して投与開始。 | |||
06年05月17日 | 19:15 | 54 | 夕方帰ると明らかに症状が悪化している。塩焼きみたいだ。ウーデニウムでないのか?白点ならもう少しかゆがるそぶりがあるはずだが、今回それはまったくない。でももう2、3日は投与して経過を見ないとなんともいえない。 | |||
06年05月18日 | 07:30 | 60 | 朝起きてみてみると、お魚さん達の様子が変だ。いつもは泳いでいるのに、物陰でじっと身を潜めている。しかも症状も明らかに悪化している。ヤバイ。餌をやっても食うのはアケボノ君とカクレLのみ。過去2回の硫酸銅投与ではこんなことはなかった。もうだめかもしれない。 | |||
06年05月18日 | 19:30 | 60 | 夕方帰って、水槽の様子を見ると、症状はそんなに変わらないもののお魚さんたちは泳ぎ回っており、餌もねだるようになっていたので、最悪の状態は何とか回避できた様子。銅濃度を測るものの今回の試薬ではなぜか反応が出ない。付属のサンプルでやってみると反応するから、試薬自体は大丈夫のはず。ただ、測定単位がppmではなく、mg/Lとなっている点は前回のRedseaの試薬と異なる。しかし、1g=1000mgで1L≒1000gだから、1mg/L→1mg/(1000x1000mg)→1ppmのはず。試薬は0.1ppmから1ppmまで測定できるはずなのに、まったく反応しない。何か間違いがあるんだろうか。 | |||
06年05月19日 | 07:30 | 30 | やや症状がよくなっている気がする。銅濃度がわからないので、とりあえず半分の30ccを投与。今日中にRedseaの銅テスターが着くはず。 | |||
06年05月19日 | 21:00 | 0.25- | 20 | Redseaのテスターが着いたので、これで測るとやはりちゃんと反応する。不思議だ。 | ||
06年05月20日 | 08:00 | 0.2+ | 昼見てみると昨日あれだけあった白点がほとんど消えている。ただし、ひれは濁っており、体表も荒れた感じではある。 | |||
06年05月20日 | 20:30 | 0.1+ | 13 | 明日からの引越しに備えお魚さんは一足に先に新居へ。プラスチックのコンテナボックスに水50Lと濾財の1/33を入れる。 水量に見合う銅を計算しなおして点滴開始。お魚さんたちはこのストレスに大丈夫だろうか。" |
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06年05月21日 | 魚たちは元気な様子で一安心。朝チェックしたら、昨晩の点滴が止まっていたため、点滴を再開。 | |||||
06年05月22日 | 11:00 | 0.1++ | 10 | プラスチックコンテナの中でもお魚さんたちは元気。コンテナボックスは半透明なので、中の様子は鮮明には見えないものの、ほぼ完治の様子。ダメ押しに0.2ppm相当の10ccを投与。 | ||
この後何回か投与したかもしれないし、してないかもしれない。ちょっと忘れてしまった。 5/24か25には新居で本水槽をセットし、お魚さん達を移し替えている。その際にコンテナボックスで見えなくなっていたカクレクマノミSの遺体が発見される。硫酸銅か、ストレスか?真の死因は不明だが、かわいそうなことをしてしまった。ショックである。 5/26から6/9まで米国出張に行く。その間、上さんからの連絡で、本水槽に移したお魚さんたちに再び白点が出たとのこと。しかも塩焼き状態だったらしい。上さんに硫酸銅治療の仕方を教えてやってもらうしかないか?しかし、数日後の連絡では白点の数が減り、明らかによくなっているとのこと。本水槽に移したばかりでストレスがあったのは判るが、塩焼き状態にまでなったものが自然治癒するのか半信半疑で何度も確認するが、やはりよくなっているらしい。出張から帰って確認してみると、オニハタタテのヒレに多少の白点と濁り、その他の魚にもほんの少し白点がついている程度。それも日を追うごとによくなっており、7/4現在ではまったく見られない。 |